東京高等裁判所 昭和42年(ネ)244号 判決
成立に争のない甲第一号証の五によれば、被控訴人町会の会長(注)は同町会の代表機関であることが明らかであるから、同町会とその会長とはその地位においてはいわば同一体であり、その間に法律上の対立関係は成立しえない。町会の意思表示(その他の意思の表現を含む)は常に会長のみによつてなされるから、会長が法律上正当な会長である限りその会長によつて代表されない町会の意思表示はありえず、したがつて、町会と会長との間にその地位をめぐつて法律上の対立を生ずる余地はないのである。もとより、違法な町会の総会における決議により会長が選任され、その会長が町会を代表して正当な会長の地位を争うことは、十分に考えうることである。しかし、この場合でも違法な決議により選任された会長によつて表示された町会の意思は法律上町会の意思とはいえず、したがつて、町会が正当な会長の地位を争つているということはできない。町会と会長との間に法律上の対立関係がなく、町会が会長の地位を争いえない以上、自ら正当な会長であることを理由として町会に対しその地位にあることの確認を求めえないことは明らかである。そしてこの理は、町会長の職務を執行すべき地位にあることの確認を求める場合でも異るところはない。付言するならば、右の場合、正当な会長またはその職務を執行すべき者は違法に選任された会長の意思いかんにかかわらず、町会の業務を執行しまた代表権を行使しうべく、もし、これを妨害する者あらば、その者に対して妨害排除の請求をし、また、場合により町会を相手に違法に選任された町会長の地位を争つて自らの職務執行の円滑化をはかれば足りるのである。(注 権利能力のない社団であることは当事者間に争いがないことに確定されている)
(長谷部 鈴木信 岡田辰)